輸出管理の注意点(オフショア開発成功のすすめ)

オフショアを活用した開発を進めている人
・輸出管理で気を付けることはなんだろう?
・そもそも輸出管理とはなに?

といった質問に答えます。

今回から数回に渡って少し専門的な話をします。

オフショアを活用すうるうえで、

重要な手続きとして、

・「輸出管理」

があります。

海外の会社である「オフショア」に

仕事を発注するということは、

必要な情報や機材をオフショアの会社に

渡すことになります。

それはつまり、

・「輸出」

にあたります。

輸出あたっては、

・「法律」

に従って輸出する必要があります。

法律を無視して情報や機材を勝手に輸出すると、

法律的なペナルティを受け

最悪の場合業務が継続不可能になります。

そうならないよう、適切に輸出を行うのが

「輸出管理」です。

輸出管理は非常に専門的で複雑な問題なので、

このブログでは特に注意すべき点に絞って話をします。

目次

下記が、今回の目次です。

1.オフショア活用における輸出管理とは
2.外為法とEAR
3.オフショア開発で注意すべき輸出
4.居住者と非居住者
5.輸出の具体例
6.出来るだけ輸出しない(2020.07.04 追記
7.暗号技術を規制対象外の範囲内で輸出する(2020.07.04 追記
8.まとめ

では、1つ1つ説明していきますね。

1.オフショア活用における輸出管理とは

まず、

・「輸出管理」

とは何でしょうか?

輸出管理とは読んで字のごとく

・「輸出」を「管理」

することです。

オフショアに開発を依頼する場合、

必要な「情報」や「機材」を

オフショアの会社に渡す必要があります。

この「情報」「機材」を輸出して良いか悪いかを判断し

必要な手続きを行うことを「輸出管理」と呼びます。

ちなみに、輸出する「情報」「機材」を

法律上それぞれ

・「情報」= 技術(電子データーや口頭でやり取りされる情報)
・「機材」= 貨物(製品、部品など情報以外のすべて)

と呼びます。

そもそもなぜ輸出管理が必要なのでしょうか?

一般財団法人 安全保障貿易情報センターのホームページでは、

下記の通り記載されています。

安全保障貿易管理とは、
国際社会における平和と安全を維持するため、
武器そのものを含め、軍事転用可能な民生用の製品、
技術などが、大量破壊兵器の開発を行っている
国家やテロリスト(非国家主体)の手に渡らないよう、
輸出規制を行うことを指します。

 つまり、輸出する技術や貨物が大量破壊兵器に

使われることがないよう規制を行うことが目的なのです。

ちなみに、昨年韓国に対して下記3品目の輸出管理が強化されました。

・「フッ化ポリイミド」
・「レジスト」
・「フッ化水素」

これらは、半導体の製造に使われますが、

実は化学兵器の開発などでも欠かせないものなのです。

韓国から北朝鮮へこれらの素材が横流しされた

可能性があったため日本は輸出管理を厳格化させたのです。

では次に、輸出を行う際に守るべき「法律」に関して説明します。

2.外為法とEAR

輸出に関して順守すべき法律に関しては、

大きく2つあります。

・外為法:外国為替および外国貿易法
EARExport Administration Regulations

外為法は日本の国内から海外へ

輸出する際に守るべき法律になります。

しかしながら、EARのはアメリカの輸出管理に関する法律です。

では、アメリカの輸出管理に関する法律を

なぜ守らなければならないのか?

EARはアメリカ国内からアメリカ以外の国に

輸出する際に適用される法律ですが、

アメリカ原産の「技術」「貨物」を

日本から日本以外に輸出(この場合は再輸出)する

際にも適用される法律なのです。

例を挙げると、

・アメリカ原産の半導体を組み込んだ製品を日本以外に輸出
・アメリカ原産のWindowsをインストールしてパソコンを輸出

などです。

日本から輸出する場合外為法ばかりに気が向きがちですが、

EARを遵守せずアメリカからペナルティを受けると、

前述の半導体やソフトウェアの供給を受けられなくなり

事業に大きな影響を与えることになります。

輸出の際には、必ず「外為法」「EAR」の2つに

注意するようにしましょう。

3.オフショア開発で注意すべき輸出

では、次にオフショア開発関係の「輸出」について話をします。

オフショア開発を進めるうえで注意すべき「輸出」とは何でしょうか?

輸出で注意すべき点は前述の通り、

軍事転用可能な民生用の製品、技術などが、
大量破壊兵器の開発を行っている
国家やテロリスト(非国家主体)の手に渡らないよう、
輸出規制を行う

と規定されています。

このブログ述べているオフショア開発とは主にソフトウェア開発を

指しますが、ソフトウェア開発の中に軍事転用可能な技術が

あるのでしょうか?

結論としては「あり」ます。

それは、

・「暗号技術」

です。

暗号技術はテロリスト間での通信を秘密裏に行うためなど、

軍事上非常に重要な技術なのです。

一昔前までは、

オフショア開発で暗号技術を取り扱うことなどあまりなかったのですが、

最近はハッキングなどのセキュリティ確保の観点から

あらゆるソフトウェアで暗号機能が実装されるようになりました。

外為法でもEARでも暗号モジュールの扱いは厳格に定義されています。

なので、オフショアに開発を依頼する際には、

・「暗号」に関する開発を依頼するか否か
・開発に暗号ライブラリを使用するか否か
・提供するソフトウェアに暗号ライブラリが含まれるか否か

を確認する必要があります。

なお、暗号機能を使用したからといって

輸出出来ないわけではありません。

開発に必要で、軍事目的でないことをきちんと証明すれば、

暗号機能であっても輸出は可能です。

しかしながら、その手続きには数ヶ月を有しますので、

オフショア開発で暗号機能を取り扱う場合には、

スケジュールを含めて事前の計画が重要となります。

この「暗号機能」の確認をを忘れると、

いざ開発を始めようとして輸出出来ず

オフショアに開発を依頼できないといったことが発生しますので、

注意しましょう。

4.居住者と非居住者

では、次にどのような行為が「輸出」にあたるのか

話をしたいと思います。

「え?海外にモノを送付したら輸出でしょ?」

と思われるかもしれません。

ところが、事はそれほど単純ではありません。

輸出は、日本から日本国外へ技術や貨物を送ることを指しますが、

居住者から非居住者に技術や貨物を渡すことも輸出にあたります。

「居住者」「非居住者」という良くわからない言葉が出てきました。

簡単に説明すると「日本人」から「日本人以外」という

意味なのですが、外国人でも日本人と同じ扱いとなるケースも

あります。

詳細は以下を参照ください。

(輸出許可申請代行センターから抜粋)

個人
本邦人
個人
外国人
法人
居住者

(1)日本に居住

(2)在外公館(例:在アメリカ日本国大使館)に勤務する目的で出国し外国に滞在する者

(1)日本国内の事務所(外国法人の日本国内にある事務所を含む)に勤務する者(例:外国人採用)

 (2)日本に入国後6ヶ月以上経過するに至った者

(1)国内にある本邦法人

(2)国内にある外国法人の支店/事務所等

 (3)日本の在外公館(例:在アメリカ日本国大使館)

非居住者 (1)外国の事務所(海外支店等及び現地法人並びに国際機関)に勤務する者(例:海外出向者等)

(2)2年以上外国に滞在する目的で出国し滞在する者

(3)(1)又は(2)の者の他、2年以上外国に滞在するに至った者 (4)上記以外の者で、一時帰国し、日本での滞在期間が6ヶ月未満の者(例:海外出向者の一時帰国等)

(1)外国に居住する者

(2)外国政府又は国際機関の公務を帯びる者

(3)外交官又は領事官及びこれらの随員又は使用人。ただし、外国において任命又は雇用されたものに限る

(1)外国に居住する者

(2)外国政府又は国際機関の公務を帯びる者

(3)外交官又は領事官及びこれらの随員又は使用人。ただし、外国において任命又は雇用されたものに限る

日本に住む外国人や、海外に住む日本人などは、

条件によって居住者とみなされますので、

この表を元に確認してください。

そして、場所との絡みで、

1日本国内で居住者から非居住者への技術提供が輸出となる
2海外に向けて貨物、技術を提供する場合は、居住者・非居住者を問わず輸出となる

という判断になります。

5.輸出の具体例

少し難しい言葉で説明してきましたが、

具体的にオフショアとの開発を進める上で、

どういったケースが輸出となるのか、

具体例をあげて説明します。

1)開発資料をCDに格納してオフショアに送付。輸出
2)オフショアとの会議で技術的な議論をする。(輸出
3)メールで仕様書を送る。輸出
4)クラウド上のストレージに資料を格納しオフショアが参照。輸出
5)オフショアから出張で日本に来たエンジニアと会議で議論する。輸出
6)オフショアの会社に就職した日本人にメールで資料を送付する。輸出
7)オフショアから日本のテスト環境にリモートで接続してテスト。輸出

項(1)は一番分かりやすい輸出のケースですが、

項(2)以降は、

「え?それも輸出なの??」

といったものもあったと思います。

思わぬケースで輸出とある場合もありますから、

オフショアと開発を進める場合、

細心の注意を払うようにしてください。

6.出来るだけ輸出しない(2020.07.04 追記

輸出管理上の問題を回避するために、一番効果的なのは

・「輸出しない」

ことです。

・「はあ?当たり前だろう???それが出来たら苦労はしない」

という反論の声が出てきそうです。

そうです、当たり前です。

しかしながら、そんな当たり前のことが

なかなか出来ていないのです。

技術の輸出に関しては、特に「暗号」の輸出が

規制の対象になります。

なので、暗号の部位に関しては、極力輸出の対象から

省くようにするのです。

方法としては、以下のようなやり方が可能です。

(1)OSSなど公知の暗号を活用する場合

輸出時には暗号のライブラリを添付せず、

オフショア側でOSSを入手してもらい

オフショア側でビルドしてもらう。

(2)一度暗号ライブラリを輸出した経緯がある場合

暗号ライブラリは輸出のたびに変わるケースは稀です。

一度ライブラリを輸出した経緯がある場合には、

以降の輸出からライブラリの部分を削除して、

規制対象外の技術として輸出し、オフショア側で

暗号ライブラリと結合する。

このように、暗号の部位をソフトウェア全体から切り離し、

本体は規制対象外の技術として輸出するのがポイントです。

規制対象の部位があったとしても、輸出の回数を可能な

限り減らすか、公知の暗号技術であればオフショア側で

直接入手してもらうことで、自分の会社から輸出する

手間を減らすのです。

公知の暗号技術であれば輸出の際に「暗号特例」を

適用できるので規制対象となる暗号よりは輸出の手間が

減りますが、そもそも論として

・「可能な限り輸出しない」

方法の方が、手続きに関する手間を削減できます。

.暗号技術を規制対象外の範囲内で輸出する2020.07.04 追記

暗号技術が日々高度化する中で、古い暗号や公知の暗号に

対する規制が年々緩和されています。

また、一定の条件を満たすことで規制の対象から

除外されるケースもあります。

たとえば、

・暗号強度や鍵長による除外
・市販暗号特例
・少額特例(主に貨物)
・休眠暗号

などです。

これらも年々扱いが変わっていくので、ここではあえて

詳細は記載しません。

その都合、経済産業省のページを参照し、現在の規制の

扱いを確認するようにしてください。

経済産業省のページへのリンク

ここで説明したいポイントとしては、

暗号を主たる機能として開発しているソフトウェアを除き、

大抵のソフトウェアに関しては公知レベルの暗号を

使用しているのが大半であり、規制の除外となるケースが

ほとんどです。

自身が開発するソフトウェアに関して、たとえ暗号を

使用していたとしても前述のような例外を適用できないか

確認してみましょう。

ただし、輸出管理に関わる法律や省令は非常に難解なので、

自身で勝手に判断するのではなく、専門家を交えて

適切に判断するようにしてください。

8.まとめ

今回は、オフショアに開発を依頼する場合は

技術や貨物の提供が発生するので、

・「輸出管理」

が必要となることを説明しました。

そして、輸出する場合に守るべき法律が

下記の通り2種類あることを説明しました。

・外為法:外国為替および外国貿易法
EARExport Administration Regulations

外為法は日本の法律なので分かりやすいと思いますが、

アメリカの法律である「EAR」の遵守も必要なことを

説明しました。

次にソフトウェア開発において、特に輸出の際に

取り扱いに注意しなくてはならないのは、

・「暗号技術」

であることを説明しました。

暗号技術は軍事目的への転用が可能なため、

厳しく規制のかかっている技術です。

特に暗号技術を輸出する場合には、

経産省への申請が必要になり、問題なく処理が

進んでも許可を得るまでに数ヶ月かかることも

話をしました。

そして最後に、改めて

・どのような場合が輸出に該当するのか?
・輸出の具体的な例

を説明しました。

いかがだったでしょうか?

少し難しかったと思いますが、

オフショアを活用した開発を推進する場合は、

輸出管理は必ず直面する問題であるため、

今回あえて取り上げてみました。

それでは、また。

あつし